今週は植治の庭をシリーズで紹介しているが、今回は長浜にある慶雲館である。冬の盆梅展で有名だと思います。
お庭の紹介の前に、慶雲館を語る上では立地条件が結構重要となるので先に紹介したい。
出典:長浜駅周辺観光マップ(抜粋)
https://www.biwako-visitors.jp/guide/detail/81?city=601
場所は、JR北陸本線長浜駅よりやや南にあり、北国街道や黒壁スクエアなども徒歩圏内である。
慶雲館の前には旧長浜駅がある。現在は長浜鉄道スクエア(鉄道博物館)となっている。
旧長浜駅舎はこんな感じ。
旧長浜駅舎から見た慶雲館。今回紹介する慶雲館は、旧長浜駅のすぐ隣にあるのが大きな特徴である。
慶雲館は、明治19年(1886年)秋、明治天皇皇后両陛下が翌年京都行幸啓の帰路に大津から船を利用し、長浜に上陸されるのを機に、長浜の実業家である浅見又造が私財を投じて天皇の行幸施設として整備した施設である。
長浜鉄道スクエアに展示してある当時の鉄道敷設の様子(地図)。明治19年当時は大津から船に乗って長浜に向かい、そこから鉄道で関ヶ原方面に向かうルートとなっていた。
明治20年頃の長浜駅周辺の模型が展示されている。長浜駅の向かいは琵琶湖に通じる入江で、慶雲館も隣接して建てられているのがわかる。
慶雲館の様子。慶雲館のすぐ脇に船が係留している。
慶雲館の入口。
敷地から向かって右手(琵琶湖方面)に、「旧長浜港跡」の石碑があった。
前置きが長くなったが、ここから園内の様子を紹介する。まずは前庭の様子。
これまで紹介した京都の庭園とは異なり、灯籠や景石の一つ一つが非常に大きく、一見すると同じ植治が作庭したお庭とは思えなかった。
建物の玄関の様子。入口付近は華美さはなく落ち着いた佇まいである。
2階の様子。明治天皇・皇后両陛下をお迎えするための「玉座の間」がそのままの状態で残されている。
2階から見た主庭の眺め。ここから見たお庭の景色は確かに植治の庭らしい。かつてはここから琵琶湖を望むことができたとのこと。
庭もさることながら、館内に展示してある屏風や襖絵がとてもすばらしかった。
続いて1階の様子。
この広間が非常に大きくて開放的なのが印象的である。庭を観賞することを念頭に造られたのだろう。
庭を正面から見た様子。
手前の灯籠とクロマツの迫力がすごい。
主庭の様子。手前に芝庭を配して、奥に流れや築山を設けているのは他の植治の庭と同じだが、土地の起伏はこちらの方が豊かである。また景石を多く用いている。若干コテコテした感じがするが施主の好みもあったかもしれない。
惜しむらくは流れの部分に水が流れていない点である。おそらく庭園の管理上のことだと思うが、水の流れがあると全然雰囲気が違って見えたと思うだけに残念である。植治の良さは細やかな流れにあると思うのだが・・
主庭から建物を見た様子がとてもよい。迎賓施設として建てられただけあり、ここでいろいろな催しが行われたのではないかと想像できる。
京都の庭園(特に並河靖之七宝記念館)と比べると、よく言えば迫力があり、悪く言えば繊細さにかけるというのが個人的な感想だが、木が大きくなりすぎたのもあるかもしれない。もう少し木を剪定して庭の奥を透かして見えるようにすれば、庭に軽快さが出て良くなると思う。あとは水が欲しいですね。流れがあるだけで庭の印象は全く替わると思う。年数回だけでも良いので流れを復活して欲しいと思います。