ROKUZAEMONの諸行無常

田舎でひっそりと暮らしています

山代温泉湯の曲輪

石川では温泉地にある共同浴場を「総湯」と呼ぶそうな。普通に共同浴場と呼ぶ温泉地もあるし、信州では「外湯」と呼んだりもするが、市民が普通に入れる場所のことを言う。

昨年箱根に行ったときに、「ユネッサン」なるスーパー銭湯に入ったが、高いのなんの。箱根の芦ノ湖付近に総湯のような施設があれば大繁盛すると思ったのは筆者だけではないと思うのだが。

昨日は、先週できたばかりの「山代温泉総湯」に行く。全身雨まみれ、汗まみれの体で行くのは正直気が引けたが、同じ県内とはいえ片道1時間近くかかる場所にそう何度も行くわけにいかないので、恥を承知で恐る恐る行くことにしたが、観光客だけでなく、普通に市民が風呂上りの姿で闊歩しているのを見て安心した。

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まだ道路は工事中のようだが、左に見えるのは古総湯、右に見えるのは市民向け湯と呼ばれる。

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金閣寺を髣髴とさせる端正なフォルムである。下屋は何で葺いているのだろうか。杮葺きなのか?

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2階は休憩できる場所になっている。以前道後温泉に行ったが、そんな感じか。お湯に入るとたしかに湯疲れするので、休憩できる場所がほしいとは以前から思っていたが、浴客のニーズにあっていると思う。

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建物の四方から出入りできる構造になっており、ある意味ユニークな建物である。

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反対側にあるのは市民向け湯である。実は昨日入ったのはこちらの方。というのも、古総湯は、洗い場がないため(昔ながらの伝統的なお風呂の作り方になっているため)、体を洗おうと思うと市民向け湯でないといけないのだ。

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加賀の赤瓦がものすごく目立つのだが、下屋の屋根部分が大きすぎて、大味な印象を受ける。

ちなみに、古総湯は、明治時代に実在した総湯を復元したとのこと。市民向け湯はわからないが、古総湯の整備に合わせて、調和した建物ということで整備されたのだろう。

見ていると温泉場というよりも、芝居小屋っぽく見えなくもない。

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山代温泉は、湯の曲輪(ゆのがわ)と呼ばれる都市構造をしており、外湯のない時代には総湯の周りに旅館が立ち並び、やがて総湯から各旅館に配湯するようになったのだが、昔は木の管で配湯していたために旅館の周りにしかお湯を送れなかったために、総湯を中心に、四方に旅館が取り囲む構造になっているそうだ。

現在でも湯の曲輪周辺には旅館が残っており、上の写真は山代に現存する最古の旅館建築である白銀屋である(国の登録有形文化財)。めちゃくちゃ高いのでも有名な旅館である。一度経営破たんして、現在は星野リゾートが経営しているとのこと。べんがらの色合いがお茶屋っぽくて良い。

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これははづちを楽堂と呼ばれる建物で、みやげ物店や飲食店が入っている。この建物は10年以上前からある。

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この建物は九谷焼を扱うお店なのだが、最近周辺のまちなみに合わせてファサードが改修されたようである。

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これは薬王院と呼ばれるお寺の山門である。

山代を知る人間からすると、山代には何もない(ストリップはあるけど)、片山津も何もないが片山津は柴山潟があるだけましで、見るべきものが何もないという印象であったが、総湯を中心に湯の曲輪周辺だけでも、少しは絵になる場所ができたことは喜ばしい。観光客にとって、写真を撮る場所があるなしでは印象が全然異なる(観光パンフでも堂々と紹介できるしね)。

最近山代は宿泊観光客が激減しているようだが(というか、どうして山代みたいな温泉地に年間100万人もの人がくるのか不思議でならなかったが)、これからは、観光客数もさることながら、温泉を楽しむ質の高い観光地として復活してほしいと思う。

道後温泉も、あの道後温泉本館以外は何もないところであるが(でもあの建物は本当にすばらしい)、山代のほうが雰囲気はましになったと思う。